CAJ対談2013 ノートマン 後編

 

前編からのつづきーーーーー!

 

 

 

 

 

カツキ「で、ある時期に思ったんですが、魚の気持ちとして、もしかして魚も空を泳ぎたいんじゃないかなって(笑)。ジオラマ景の魚を鳥に見立てるっていうんだけど、別に鳥に見立てなくても、空と魚ってビジュアル的にはすごい調和するし、素人が見ても驚きと感動を与えるものなんですよね。だから、魚にとってストレスのないように、身を潜められる影の部分を十分確保して、空を泳ぐ魚っていうのはいいなあと思って、ぼくは水の中の景色じゃなくてもいいって思うようになった。」

 

ノートマン「ジオラマは、今、作っててみんなが楽しいと思えるひとつの形なんですよね。」

 

 

タナカカツキ作「グラン☆ビュー」世界水草レイアウトコンテスト2013世界ランク16位  ©AQUA DESIGN AMANO CO., LTD. 

 

 

カツキ「要は、水中景でも陸上景でもつまんない作品は自然淘汰されてゆく、今の段階でジオラマ陸上はダメっていう雰囲気は、なんていうか…、水草レイアウト水槽はこうあるべきだ!っていう、クラシック音楽はこうあるべきだ!みたいな…、表現の窮屈さを感じはじめる人がでてくるように思います。コンテストの結果をみると、そんな懸念は無用ですけどね(笑)。上位ランクの作品は堂々とアリゾナの砂漠、水草でサボテン作っちゃいますからね(笑)」

 

ノートマン「2013年のトレンドは一部で「ジオラマ」と呼ばれ、まだ半ば写実の範疇にあると思います。ですが中にはそこから一歩進んだ表現を模索するものもありました。文字通りの「ジオラマ = 実際の風景の再現」ではなく脳内に描いた風景を表現したり、自然風景のエッセンスを凝集した「空想のジオラマ」といえるような作品がありました。そのような作品がトップレイアウターだけでなく、レイコン応募者の多くの層に散見できます。「みんなが思い思いに楽しんでる!」と感じました。」

 

 

タナカカツキ、レイアウト前の構想プラン

 

カツキ「このコンテストではもっとビックリするような作品とか、考え方に出会いたいですね。独創性の幅がガーッと拡がる場であってほしい。そりゃないわ~~ってのをもっと見たい。今の流れを壊しに行くような作品がもっと評価されるといいですよね。反逆がないと退屈です。かつて、天野さんがそうであったようにねえ」

 

ノートマン「天野さんは、アクアリウム産業の一角を崩しましたからね。」

 

カツキ「ネイチャーアクアリウムって素晴らしい思想だから呪縛される。水中感ってのは美しさにたどり着くひとつの方法にすぎないって今は思えます。」

 

 

ノートマン「僕の解釈なのですが今は、水草絵画の確立~黎明期が終わりつつあって、一般(ポピュラー)化の始まりの時です。厳密な定義付けよりも裾野の拡張、どれだけ多くの人が楽しめる場となれるのかが問われていると思います。文化のレベルはそれに関わる人口の多さに比例するといわれますので、作品レベルの向上にとっても広く普及することは大切です。様式的な「伝統文化の域」に達するにはまだ早すぎると思います。水草水槽に対して「侘び寂び」という表現を用いるのは借り物の評価という気がしてしかたが無いのです。今すべきことは水草絵画の可能性の模索だと思いますし、僕にとってはそれが最も楽しく、今後もしていきたいことです。」

 

カツキ「絵としての、水草レイアウトの強化ですね。」

 

 

 

カツキ「ぼくはとにかく、それが、水の中だろうが陸だろうが、胸を打つ作品がみたいです。だから、そう、やっぱり絵画の力をみてみたいということになるんですかね、そういうコンテストなら創作の意欲も沸く。水槽の中に魚が泳いでなくても、アリゾナの砂漠であっても、抽象グラフィックであっても、100位以内の選考対象にしちゃう天野さんの現在の審査態度は大好きです(笑)」

 

ノートマン「毎年、プログレッシブ感ありまりますよね。毎年ちがいますもんね。」

 

カツキ「個人的にはもっともっと抽象絵画がでてきてほしいですよね。」

 

ノートマン「響き合いは必要だと思うんです。せっかく年に一回、見せ合いっこしているんで、それぞれみんな全然違う作品を持ち寄りたい。響き合いが大切な気がします。」

 

 

 

 

 

カツキ「水中景を作らせたら、築地さんや小野さんにはどうしたって勝てないですからね(笑)、そういう方々の素晴らしい新作はやっぱりこれからも見てみたいし、一方で志藤さん、ノートマンの方法論も目が離せない。水槽に癒やしを求める人には理解できない作品を見たい。えげつないやつを!」

 

ノートマン「見てみたいです(笑)。」

 

カツキ「あんまりね、コンテストのことばっかり喋ってると、コンテスト至上主義みたいなね(笑)まあ、実際、今はそうだからいいんですけどね、そんな話がしたかったですから今日は。えーーっと、今日はありがとうございました!」

 

ノートマン「ありがとうございました~。」