世界ランク3位の水草水槽の作り方 その1

顧問のタナカカツキです。

 

 

 

 

IAPLC2025世界3位をいただきました。

 

 

 

 

惜しい〜〜〜!
グランプリじゃないのか〜〜〜!
(顧問は謙虚さなど微塵もございません)

 

© Aqua Design Amano Co.,Ltd.
© The International Aquatic Plants Layout Contest Steering Committee

 

とはいえ、トップレベルの評価をいただき
内心は少しほっとしておりますので、いったん喜びたい
とくに、水草の仲間たちには深く感謝しております。
ほぼ毎日のように進捗を報告しあい、意見を交わし
立ち止まることなく続けてこれたのも仲間がいてこそ!
ひとりでは、世界ランク上位など到底ムリ!だったと思います。
急に謙虚さを発揮して言ってるのではなく、これはマジで。

 

 

 

 

では、恒例のメイキング記事スタートです。

 

 

 

 

まずは、図案

 

顧問はグランプリを目指していますので
圧倒的な印象を残すレイアウトをせねばなりません!

 

 

 

 

なにか参考になる自然界の絶景写真などを探っていた時期もありますが

 

実際の風景では、もうすでにおとなしすぎる!物足りないということで。

 

 

 

 

もっと頭の中にある感情のようなもの
ほとばしるような、剥き出しのなにか
えげつのない抽象的なイメージから造形してゆきました。

 

創造性はもちろん、テーマ性独創性、目新しい要素
革新的なアプローチも必要です。

 

 

 

 

人がまだあまりやっていないようなこと。
最低5つは要素として盛り込みたいです。

 

そんなことを考えて
5つのイノベーションとして計画しました。

 

その1 石のかたまりにグレー塗装
自然素材に塗装をするということ自体、抵抗感を感じさせますし、そのようないかにも人為的なことを嫌がるジャッジもありそうです。とはいえ、大々的にやってないからこそチャレンジしがいのある手段でもあります。
→その後、グレーではなく、黒塗装をして石のマテリアルが潰れてしまうほどしっかりと黒い影を出しました。

その2 流木を使って清流の見立て
近景と遠景を繋ぐような清流や、道、細流などを表現する場合、白砂などを使用するのが一般的ですが、手法としてはすでにクソ古臭いものなので、流木をその見立てに使用するというのはまだあまり見たことがありません。ただし、それは果たして清流に見えるのか?木の根の表現との差をどのようにつける?などの課題あり。
→その後、流木のハイライト部分と白砂、白流木(塗装したもの)のあわせ技で、大きな流れを表現。しなやかに視点の移動を促すことを実現できた思います。

その3 清流の影に暗がりの表現
現実の風景などではそのような、川や道の下に暗がりができるということはないので
このレイアウトは自然風景を模したジオラマではなく、絵画やグラフィック
(私の中ではクレイジーペインティング系と呼んでおります。前回2024年の作品もそうです)
グラフィックからのアプローチ作品であるという表明でもあります。
ただ、このような色や形だけにフォーカスした作品は良いジャッジを受けない傾向もあります。
→その後、そのまま採用。魚の住処としても機能。

その4 流木で「水しぶき」の表現
そういう表現もあまり見たことがありません。
→その後、大きな流れを阻害してしまいそうだったのと、主たる構造に要素が多すぎると大きな流れも伝わりにくくなると思い取りやめました。

その5 見たことないくらいのカラフルさ
作品全体が緑色、というのが多くの作品です。その中でカラフルなものは目立ちます(前回も採用した演出をさらにねちっこく!クドく!)色調を強調するためにはしっかりと色の帯を実現させなければなりません。伸びすぎた有茎草などは色が混ざらないようにしっかりとトリミングします。あえて整えすぎない、不完全さ、見る者に「余白」や「呼吸」を与える意図的な“ゆるみ”という評価は手放す必要があります。人為的に見えてしまうという課題は残ります。
→その後、そのまま採用。赤系の水草を積極的に採用、白細根を配し、高密度の色相表現をしました。

 

 

おおよそのプランはできました。
水槽全体に大きな構造物で印象を残す、というのは
上位作品の必須のトレンドのような部分もあるので
今回もひきつづき採用。

 

 

 

 

土台を作ってゆきます。

 

まずは、空のガラスのキャンバスから

 

 

 

 

底面にはマットと、両奥に自作格納スペース設置(通年の)

 

 

 

 

 

奥に向かって急勾配を作っていくための嵩上げ

 

底面奥のスペースはコットンだらけになる予定(これも通年の)

 

 

 

 

比較的軽めの、しっかりと噛み合うような石を乗せてゆきます。

 

この辺りの石は地面に隠れて見えなくなるので
無心に積んでゆきます。

 

 

 

 

石の隙間にはコットンを入れて、低床をバクテリアの
住処の確保です。

 

 コットンは、色も黄ばんだ使い古しのもので。

 

 

 

 

土台の完成

 

 

このあたりはテキトーに。

 

 

 

 

図案を元に、今回のレイアウトの補助線を描き入れます。

 

ホワイトポスカで前面ガラス面に。

 

 

 

 

気分もノッてきた!

 

 

 

記事は次回へ続きますが、

その前に少しだけ、なぜ顧問がこのIAPLC(世界水草レイアウトコンテスト)に毎年参加しているのか、その背景を記しておきたいと思います。

 

IAPLCは、世界中の優れたレイアウトが一堂に集う得がたい舞台です。そこには、驚くような発想や、異様なまでの執念、そして時には、ただただ静かで美しい水景があり、そのいずれもが等しく感動的です。

顧問は毎年、それらの上位作品に目を凝らし、構図の妙、色調の設計、そしてどうしてこの配置になったのかという設計者の時間の流れに想いを馳せます。それは、誰かの模倣ではなく、自らの幅を広げるための対話です。

作品をつくるたびに、顧問は少しずつ、手の内を変えています。

得意なスタイルにすがるのではなく、なるべく毎年、別人のようなレイアウトをつくりたい。思い通りにいかないことの連続ですが、それでも手を濡らしながら考える時間は実に楽しいです。

 

ただ、グランプリを狙うとなると話は別です。

このコンテストは複数の審査員によって評価されるため、それぞれの審美眼を横断して得点を集めることが求められます。それぞれの好みに合わなければ票が伸びません。誰にも嫌われないような作品を目指す必要が出てくる。そのぶん個性が強すぎたり独特すぎたりすると、なかなか評価が届きにくい面もあります。そして嫌われないという条件は、ときに尖った独創性や新規性と引き裂き合いになります。

自己表現の鋭さと審査基準への迎合とが、ひとつの作品の中でせめぎ合い形を濁してしまうこともあります。

近年は特に完成度の高さや見慣れた構図が優先される傾向があり、ちょっと荒々しくて勢いのあるような作品は、なかなか日の目を見ないことも。

表現の自由よりも整合性や過不足のなさや秩序が重視されるような空気が漂いはじめると、新たに挑もうとする人には、敷居の高さが重くのしかかる。表現を楽しみたいという人も、なんだか学校の課題をやらされてるような味気なさを感じます。実際、顧問のまわりでも、そうした空気に違和感を覚えコンテストから少し距離を置いた仲間が何人かいます。

気持ちはとてもよくわかります。顧問自身もモヤモヤと迷うことはたくさんあります。

それでも、顧問はこの場に居続けたいと願っています。

水草水槽は、もっと自由でもっと楽しくてもっと不器用であっていい。そうした見るものへの多少の違和感を作品に託し続けることで、やがてこの舞台の風通しも少しずつ変わっていくのではないか──そんな希望を手放さずにいます。

水草水槽という文化が、もっと開かれて、いろんな人が自由に楽しめる場所になりますように。